日本でも無事に公開となった『Selma / グローリー/明日への行進 (2014)』。
登場人物と関係組織が複雑なのでまとめてみた。

組織・団体活動家その他

参考文献『キング牧師とその時代 猿谷要』&『アメリカ黒人解放史 猿谷要』他。

敬称略。
*組織・団体
通称 正式組織名  
SCLC Southern Christian Leadership Conference 1957年モントゴメリーバスボイコット運動の際に発足。 キング牧師が議長。1997年から2004年までキング牧師の息子3世が議長を務めた事もある。 セルマの時には多くのメンバーが運動に参加していた。
HP
南部キリスト教指導者会議
SNCC Student (National) Nonviolent Coordinating Committee 1960年にノースカロライナのグリーンズボロとテネシー州ナッシュヴィルで起きたシットイン(座り込みデモ) 、そしてSCLCの活動に感化され学生の間で発足。主要メンバーはナッシュヴィルのシットインに参加したダイアン・ナッシュ、 ジェームス・バベル、ジョン・ルイス、ジェームス・ローソン、マリオン・バリー(後のワシントンDC市長で逮捕された)など。 南部の大学生が中心だったが、ストークリー・カーマイケルなどの北部の学生が入ってからは強硬派に変わり、 名前もノンバイオレント(非暴力)からナショナル(全国)に変わった。
学生非暴力調整委員会
NAACP National Association for the Advancement of Colored People この映画にはメンバーが余り登場していないが、黒人団体の老舗であり一番大きな団体。 W・E・B・デュボイスやアイダ・B・ウェルズ等により1909年に発足。当時多かった人種暴動やリンチへの抵抗をしていた。 今でも活動は続き、支部は全米各地に広がる。イメージアワードを開催しているのもNAACP。
HP
全国有色人種向上協会
OAAU Organization of Afro-American Unity メッカ巡礼後のマルコムXがネイション・オブ・イスラムを脱退して1964年に設立した団体。 アフリカ人とアフリカ系のアメリカ人の融合、そしてアフリカ系アメリカ人の人権保護を目的としていた。 マルコムX死後は、マルコムの異母姉妹がリーダーとなったが、その後消滅。
アフロ-アメリカ人統一機構

*活動家
名前 演じた俳優 所属 その後
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア
(Martin Luther King Jr.)
デビット・オイェロウォ SCLC
議長
シカゴでの住居差別反対運動や、ベトナム戦争反対を表明していた。 1968年4月4日、メンフィスのホテルの客室前でジェームス・アール・レイにより暗殺された。享年39歳。
コレッタ・スコット・キング
(Coretta Scott King)
カーメン・イジョゴ   キング牧師夫人。キング牧師の日の設立に精魂を傾けた。再婚もしなかった。2006年に他界。享年78歳。
ラルフ・アバーナシー
(Ralph Abernathy)
コールマン・ドミンゴ SCLC
キング牧師の右腕
キング牧師暗殺後にSCLCの議長に就任。キング牧師の意志を継ぐ活動を続け、1990年に64歳で他界。
アンドリュー・ヤング
(Andrew Young)
アンドレ・ホランド SCLC ジミー・カーター大統領時代に国連大使に指名され、1977年から79年まで任務についた。 その後は1982年にジョージア州アトランタの市長につき、1990年まで続いた。
ジェームス・バベル
(James Bevel)
コモン SCLC
元々はSNCC
ジョン・ルイスやダイアン・ナッシュと共にテネシー州ナッシュビルのSNCCをリードした人物。 その後にSCLCに参加し、いち早くセルマに行き、運動を率いた。この頃はダイアン・ナッシュと結婚していた。
ダイアン・ナッシュ
(Diane Nash)
テッサ・トンプソン SNCC ジェームス・バベルやジョン・ルイスと共にテネシー州ナッシュビルのSNCCの重要人物。 フリーダム・ライダーズ等にも参加していた。この頃はジェームス・バベルと結婚していた。
ホゼア・ウィリアムス
(Hosea Williams)
ウェンデル・ピアース SCLC
元々はNAACP
セルマの行進の第一回目に先頭に立って歩いた一人。アトランタの市議会委員としても活躍。 2000年に74歳にて他界。お葬式はキング牧師の教会であったエベニーザー教会にて行われた。
ジョン・ルイス
(John Lewis)
ステファン・ジェームス SNCC 主要な公民権運動の全てに関わっていたと言っても過言ではない位の公民権運動の歩兵。 1987年に当選して以来、アトランタの下院議員に従事。
ジェームス・フォアマン
(James Forman)
トレイ・バイヤーズ SNCC
後にブラックパンサー党
穏健派の公民権運動に嫌気が差して、後にブラックパンサー党(黒豹党)のポジションを得る。 70年代以降は学業に専念し、コーネル大学にて黒人学を専攻。大学の教鞭に立っていた。2005年に76歳にて他界。
C.T.ヴィヴィアン
(C. T. Vivian)
コーリー・レイノルズ SNCC
後にSCLC
ジョン・ルイスやダイアン・ナッシュと共にテネシー州ナッシュビルの公民権運動に参加。 後に牧師となってSCLCに参加。2013年にはオバマ大統領から大統領自由勲章を授与された。
ジェームス・オレンジ
(James Orange)
オマー・J・ドーシー SCLC 70年までSCLCに参加。その後はアメリカの大きな労働組合のナショナルセンター(通称AFL-CIO)にて、 地域コーディネーターとして従事。2008年に他界。享年65歳。
アメリヤ・ボイントン
(Amelia Boynton)
ロレイン・トゥーサント 組織には属していない
米国農務省のセルマ支部で働いていた
SNCCやSCLCがセルマにやってくる前から夫のサミュエル(63年他界)と 共に黒人の選挙登録を呼びかけ手助けしていた。 その後シラー学会に所属。96歳にて2007年にヨーロッパをツアーし講演会をしている。
フレッド・グレイ
(Fred Gray)
キューバ・グッティング・Jr 弁護士 セルマからモントゴメリーの行進を認めされる為に法廷で弁護した弁護士。 キング牧師にはバスボイコットから弁護士として支えている。現在もアラバマ州にて活躍中。
ベイヤード・ラスティン
(Bayard Rustin)
ルーベン・サンティアゴ・ハドソン SCLC、A・フィリップ・ランドルフ機構、等 キング牧師が登場する前から公民権運動で活躍。日系人収容キャンプ反対運動にも参加。 キング牧師には兄的存在として、ガンジーの非暴力運動などを叩き込む。 「私には夢がある」で知られるワシントン大行進の主催者でもある。晩年もカンボジアなど世界を渡り非暴力と公民権運動に尽くした。 1987年75歳で他界。
リッチー・ジーン・ジャクソン
(Richie Jean Jackson)
ニーシー・ナッシュ 組織には属していない コレッタ夫人の幼馴染。セルマの時にはキング牧師をはじめとする活動家の食事や宿の世話をした。 晩年は当時の回想録を執筆。2013年に81歳で他界。
マヘリア・ジャクソン
(Mahalia Jackson)
レデシー 歌手 ゴスペルの女王と言われる稀代のシンガー。キング牧師のお気に入り歌手。 「私には夢がある」のスピーチの際に、キング牧師に向かって「夢を語りなさいな!」とマヘリアが叫んだ事から、 あのスピーチが誕生したと言われている。1972年に60歳で他界。
ジミー・リー・ジャクソン
(Jimmie Lee Jackson)
キース・スタンフィールド SCLC 元軍人。キング牧師とSCLCに感化され運動家となった。その後は映画でどうぞ。
ケイガー・リー
(Cager Lee)
ヘンリー・G・サンダース 一般人 ジミー・リー・ジャクソンの祖父。その後1965年に投票権に関する新公民権法が成立し、 84歳にて投票登録が実現。いつ亡くなったかは調べたが不明。
アニー・リー・クーパー
(Annie Lee Cooper)
オプラ・ウィンフリー 一般人 セルマにて生まれ育った女性。投票登録をしようとして解雇された。2010年に100歳の誕生祝いをし、 その年の11月に生まれ故郷のセルマにて他界。
ヴァイオラ・リュッツオ
(Viola Liuzzo)
タラ・オクス NAACP 第3回目のセルマからモントゴメリーの行進が無事に終了したその夜に参加者数名を車で移動させている時に 殺された。
ジェームス・リーブ
(James Reeb)
ジェレミー・ストロング 長老派教会の聖職者 公民権運動だけでなく、他の運動でも活動。セルマでの一回目の行進をテレビで見て、セルマに駆けつけた。 アラバマにて殺されたが、犯人は無罪となっている。
マルコムX
ニゲル・サッチ OAAU 1965年2月3日、SNCCの招きでセルマに訪問し、コレッタ夫人と面会。同じ年月の21日、ニューヨークにて 講演中に暗殺された。享年39歳。

*その他
名前 演じた俳優 所属 その後
リンドン・ジョンソン
(Lyndon Johnson)
トム・ウィルキンソン 第36代アメリカ大統領 公民権に関する法案をいくつも通過させた。ケネディ大統領が暗殺され、 副大統領だったジョンソンが大統領に。1969年まで大統領を務め、1973年に他界。享年64歳。
ジョージ・ウォレス
(George Wallace)
ティム・ロス アラバマ州知事 アラバマ州知事となり、1964年には大統領選にも出馬するが落選。大統領選には3度チャレンジしているが、 いずれも落選している。1988年に他界。享年79歳。
J・エドガー・フーバー
(J. Edgar Hoover)
ディラン・ベイカー FBI長官 キング牧師を嫌っており、執拗に電話盗聴などを仕掛けていた。1972年77歳で他界。
リー・C・ホワイト
(Lee C. White)
ジョヴァンニ・リビシ ジョンソン大統領のアドバイザー ケネディ&ジョンソン大統領の公民権運動関連のアドバイザーを務めた。2013年に90歳で他界。
ジム・クラーク
(Jim Clark)
スタン・ヒューストン 保安官 アラバマ州のセルマを含むダラス郡の保安官。投票権の法案が通った後の1966年に 住民投票により保安官職から落選。1978年にはコロンビアからマリファナを3トンも輸送して逮捕され、2年の禁固刑(実際には9ヶ月ほど)。 公民権運動時代を反省しておらず、2006年に今でも同じ事をやると話している。2007年に84歳で他界。


Last modified 6/18/15

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