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●● レビュー "Whitey is the mother of violence"1968年4月4日マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師がメンフィスにて暗殺された。オハイオ州クリーブランドの町も荒れた。彼等はテレビ中継にて、キング牧師の葬儀を見守った。そして夜には暴動が起きた。そしてある者達は、何かの準備をしていた。タンク(ジュリアン・メイフィールド)は、キング牧師の死に悲観的となり、その準備していた事が出来ないと、仲間のジョニー(マックス・ジュリエン)に告げたのだった。ジョニーは他の2人と共に銃や銃弾が保管されている場所を襲った。しかしジョニーは名前が入った上着をそこに置いていってしまう。そしてセキュリティが1人殺された事で、ジョニーは殺人犯として追われる事になった。ジョニーやタンクは、B.G.( レイモンド・サン・ジャック)がリーダーの革命グループに所属していたのだった。タンクは任務が果たせなかった事で、グループ除名となり、アルコールの問題もあったタンクはグループから孤立していた。そんな中、タンクはジョニーの居場所を知る。しかもジョニー逮捕に繋がる情報には、大金の賞金がかけられていたのだった... 近代ブラックムービーの母的存在と言っても過言ではないだろうルビー・ディが出演だけではなくて、脚本も手がけた作品。監督はユダヤ系で赤狩り時代にはハリウッドでブラックリスト入りしたジュールズ・ダッシン。当時の黒人名優がずらりと揃ったのも圧巻だ。黒人映画の研究者のドナルド・ボーグルによれば、この映画は「黒人革命や人種分離運動家が描かれた初めてのアメリカ映画」という事。この映画を境に、「黒人映画」も、ニュー・スタイルと呼ばれた道へと突き進む。映画でも描写されたように、非暴力はキング牧師と共に死んだという。しかしこの映画では、暴力も実に脆い事を描いている。 白人監督ゆえの...タイトル通りに物語の語り口には少々「堅苦しい」さを感じる面はあるが、遊園地のシーンなどは奇妙で、60年代らしさがある。激動の60年代の終わりが生々しく、そして芸術的にフィルムに残されている作品だ。 (Reviewed >> 9/6/13:TVにて鑑賞) |
●● 100本映画 こういうの大好き。この映画に始まり、「Sweet Sweetback’s Baadasssss Song / スウィート・スウィートバック (1971)」が公開されるまでの中でも1968-1969年制作の「The Learning Tree / 知恵の木 (1969)」、「The Lost Man / 失われた男 (1969)」、「Putney Swope / 日本未公開 (1969)」、「Slaves / 日本未公開 (1969)」という作品は黒人映画の中でも「ニュースタイル」と呼ばれている。ゴートン・パークスの「知恵の木」以外は白人監督作品。この映画もそう。「Putney Swope」の監督は息子がロバート・ダウニー・ジュニア...という事は監督はロバート・ダウニー・シニア。物凄く前衛的な映画だった。そしてこの「ニュースタイル」の黒人映画が出てきた背景には、この映画の冒頭でも描かれているようにキング牧師の暗殺というのが大きく関わっている。1968年4月4日、テネシー州メンフィスのホテルにてマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師は銃弾に倒れる。キング牧師の突然の死...それが暗殺だった事は、黒人にとっての絶望となった。オハイオ州クリーブランドに居たこの映画の主役タンク(ジュリアン・メイフィールド)も打ちひしがれてしまった。革命グループにタンクは入っており、中でも一番仲が良かったジョニー(マックス・ジュリエン)がとある任務の為にタンクの所にやってくるが、タンクは正気を失っていた。仕方なくジョニーはタンクを置いて他の2人と任務に向かう。それは革命の為に銃や銃弾を奪うという任務だった。任務は簡単に上手くいった。しかしジョニーは名前入りの上着を現場に置いていってしまう。しかも現場では警備員が死亡していたので、ジョニーは追いかけられる身になってしまう。革命グループのリーダーのB.G.(レイモンド・サン・ジャック)は激怒。タンクをグループから外す事を決める。タンクは懇願するが、リーダーは聞く耳持たず。元々タンクにはお酒に弱い面があったのも原因だった。お金もなく、自分の子供達の母親であるロウリー(ルビー・ディ)とも住めず、ロウリーが他の男性と会っているところを見てしまう絶望的なタンク。そんなタンクは逃げ回っているジョニーに偶然に会う。警察は、ジョニーの情報には多額の賞金を用意していたのだった... リーアム・オフラハティの小説「The Imformer(密告者)」が原作。この原作を元に映画化した作品にジョン・フォードの「男の敵」という作品もある。そちらは幾つものオスカー候補となり実際に監督賞などの幾つか受賞した作品。アイルランド独立戦争が舞台。こちらはオハイオ州クリーブランドが舞台。ニューヨークでもロサンジェルスでもなく、はたまた「ブラックパンサー党」のオークランドが舞台でもない。変わってるよね。でもそういう直接的な影響力が無さそうなアメリカの普通の大都市でも、キング牧師の死というのは大きな影響力を与えていたという事が分かる。 そしてそのキング牧師の死と共に非暴力運動は勢力を益々失う。キング牧師が亡くなる2年前、キング牧師を支持していた学生非暴力調整委員会(SNCC)のチェアマンをしていたジョン・ルイスは、非暴力にうんざりしていたストークリー・カーマイケル等のクーデターでチェアマンの座を失う。「ブラックパワー」を提唱したカーマイケルとキング牧師は対立していくのだった。それを受けての、この映画の革命グループ。黒人映画の歴史について研究しているドナルド・ボーグルは「この映画は黒人革命家、及び人種分離運動家が描かれた初めてのアメリカ映画」だと言う。しかしこの映画がそれ(黒人革命家と人種分離運動家)を賞賛しているかというと、それはちょっと違う。ラストやジョニーを見れば良く分かる。 時代を反映しているシーンがもう一つあって、それが私にはとっても気になった。町で演説している黒人の人種分離運動家。軍服を着た2人組みが話しを聞きにやってくると、運動家は2人を罵倒する。これはベトナム戦争の影響。1分もないシーンだけど、わざわざ入れたのが気になった。 まあなにが面白いって、この映画の主役タンクを演じたジュリアン・メイフィールドでしょう!メイフィールド自身が、公民権運動に関わっている。NAACPのノースカロライナのモンロー支部長のロバート・F・ウィリアムスに師事。フリーダム・ライダー達がそのモンローに来る頃に、モンローの黒人移住地区にいた白人カップルは黒人の群集に襲われそうになっていた。ウィリアムスはそのカップルを安全を守る為に自分の家に匿った。所がそれが誘拐とFBIに告発され、ウィリアムスは海外へ逃亡する羽目となった。そのウィリアムスの左腕として、運転手などをしていたのがジュリアン・メイフィールド。メイフィールドも後に海外へ行く。なんとガーナ独立戦争で活躍し、初代大統領になったクワメ・エンクルマの元で書記までやっているほど。そんなメイフィールドが脚本にも関わっているので、台詞が革命的で面白いです。そして説明不要なルビー・ディも脚本に関わっています。 そしてこの映画でジョニーを演じたマックス・ジュリエン。その母親を演じたのがワニータ・ムーア。そう「The Mack / 日本未公開 (1973)」でも親子を演じた2人です!その2人に加えて、プリティ・トニーを演じたディック・アンソニー・ウィリアムスもこの映画に出演。確実にこの映画がきっかけですね。 ジュリアン・メイフィールド、ルビー・ディ、マックス・ジュリエン、ワニータ・ムーア、ロスコー・リー・ブラウン、レイモンド・サン・ジャック、ディック・アンソニー・ウィリアムス、ジ=ツ・カンブカ、ジャネット・マックラックラン... 錚々たる黒人名優達の集結し何かを作り出そうとしていた事に黒人革命の波を感じざるを得ません! (1151本目) |
●● トリビア ジョン・フォードも「男の敵」として映画化したリーアム・オフラハティの小説「The Imformer」をブラックキャストでオハイオ州クリーブランドを舞台にリメイクした作品。ルビー・ディが脚本と出演している。 IMDBでは、別の人がB.G.を演じていることになっているが、レイモンド・サン・ジャックが正解。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt0063748/http://en.wikipedia.org/wiki/Uptight_(film) Not available from Allcinema |
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