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●● レビュー (Reviewed >> 9/26/22) |
●● 100本映画 "Forty years I've been chasing Sidney, I'll always be following in your footsteps."全ての道はローマに通ず。だとしたら、全てのブラックムービーはポワチエに通ず。かもしれない。ブラックムービーの歴史を語る上で、シドニー・ポワチエの名前は避けて通れない。白人のための俳優とか、オレオとか、ショーケースの黒人だとか色々言われたとしても、彼は誰が何と言おうと、アメリカ黒人のイメージを変えた。PP(ポスト・ポワチエ)、BP(ビフォー・ポワチエ)と言っても過言ではない。そんなシドニー・ポワチエのドキュメンタリー。監督は『Marshall / マーシャル 法廷を変えた男 (2017)』のレジナルド・ハドリン、製作はポワチエが幼少時代から好きだという女優・司会者オプラ・ウィンフリーが組んでいる。 幼少期から順繰りでポワチエの人となりが語られていく。そして俳優として活躍するようになると、デンゼル・ワシントンやモーガン・フリーマンという名優たちがポワチエについて語っていくオーソドックスな形式。中でも一番面白かったのが、上記した小さい頃からファンだというオプラ・ウィンフリーの語りであろう。彼女がどれだけ好きであったかは、本作で一目瞭然である。そして本作のために話しを盛っていないことも分かる。オプラは年齢を重ねて貫禄があるが、この時ばかりは少女のようだった。とは言え、メインはシドニー・ポワチエ。彼を知るには十分すぎるほどに丁寧に描かれている。冒頭で本人が読んでいるのが自伝『This Life』。機会がある度に書いているが、この自伝本は面白い。真面目、見本などと言われたポワチエだけど、この本ではかなり実直にあけすけもなく自身を語っている。絶対に悪い人ではない(と推測する)が、ポワチエ本人は割りとみんなのイメージとは違うのではないかと思っている。上記した言葉(一部を抜粋)は、デンゼル・ワシントンが初のアカデミー主演男優賞に輝いた時に、会場にいたシドニー・ポワチエに向かっていったスピーチ。40年以上ポワチエの姿を追い続けたデンゼル。そんなデンゼルが、ポワチエ逝去の時に話した思い出話がある。「前にポワチエの家に寄ったら、パジャマで罵り言葉で話していたんだ」。ずっとポワチエと比べられてきたデンゼルだが、ポワチエに父親像を感じており、一番最初にポワチエに出会った時のことも、「(舞台終了後に)楽屋に来てくれて挨拶した。凄く良かったと褒めてくれたんだ。舞台後で良かった。もし会場にいると知っていたら緊張で失敗していただろうね」とも語っている。ポワチエの珍しい罵り言葉を聞いたデンゼルだが、「妙なことにそういうことを思い出した。あの時、ポワチエの家にいるんだと実感したんだ」と、続けている。恐らく人間らしいポワチエに触れたからだろう。 だけど、スクリーンに映るポワチエは理想を絵に描いたような丁寧な言葉と発音で、そして完璧な紳士であった。奴隷制反対論者フレデリック・ダグラスが望んだ印象効果を体現したのが、シドニー・ポワチエだった。ポワチエは、パーフェクト・ジェントルマンでありながら、実は人間味溢れた人。デンゼル・ワシントンは正しい道を進んでいる。そして、デンゼルがポワチエの道を続いたように、今度はデンゼルが誰か若い人たちの道を繋げている。そんな予感のするドキュメンタリーであった。 (1832本目) |
●● トリビア |
●● その他 |
●● 受賞歴 |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 |
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●● インフォサイト https://www.imdb.com/title/tt16977750/https://en.wikipedia.org/wiki/Sidney_(film) https://www.allcinema.net/cinema/384869 |
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