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●● レビュー Beautiful but Merciless beloved country年老いたアダム(ユースフ・ジャオロ)と20歳になる息子アブデル(ディオク・コマ)はホテルのプールの監視員の仕事をしていた。昔水泳チャンピオンだったアダムはその仕事を「人生だ」と人に話す位に生きがいにしていた。しかし最近になって経営者が中国人に代わり、仲の良かったホテルの料理人デイビットが首になった。そしてアダムもついにプールの監視員から、ホテルの駐車場の管理へと移動させられた。そして混乱が酷くなったチャドの町で、息子は政府軍に強制的に入れられてしまう... マハメット・サレー・ハルーンの映画はいつも美しい。その色彩が特に印象的だ。今回は淡い色を基調にした現代劇。哀しいリストラの話かと思えば、物語は急展開をみせ驚かされる。哀しいオヤジを演じたユーフス・ジャオロの哀愁漂う演技が素晴らしい。冒頭では息子と息止め対決。最初は勝つけど、さすがに60歳となった男は20歳の男に負けてしまう。妻とはスイカを仲良く食べたり、息子が辛そうな顔をしていれば優しく声を掛ける寡黙なオヤジ。でも生きがいである仕事を息子に奪われた時、男はバランスを崩してしまう。息子が無視しているのに、しつこく上司に何を言われたのか聞いてしまう。食事中も会話をせずに、妻は「せっかく美味しいご飯を作ったのに」と小言。妻が居なくなれば、息子に「俺を年寄りだと思ってるんだろ?」と八つ当たり。負けて居られないと夜中に腹筋までしてしまう。その絵が実にシンプルだけど、力強さが印象に残る。 混乱したチャドの町の誰も居なくなったプールで男はこっそりと泣き叫ぶ。ハルーンの故郷への愛を美しさで表現し、その故郷の問題点を誰にも想像出来ないような物語で知る最高の作品。 (Reviewed >> 8/8/11:DVDにて鑑賞) |
●● 100本映画 大ーーーー好きな。いや大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大好きなマハメット=サレー・ハルーンの最新作。これが見たい為にどうやったらカンヌまで行けるんだろ?と真剣に悩んだ位見たかった作品(タニマチ募集中!)。映画ファンやっていて、一番イってしまう瞬間というのが、大好きな監督・俳優の作品を心待ちにして長ーく(日本だと特に)待たされた結果、その待った甲斐があって本当に面白い作品だった瞬間は、もーーーーーうたまらーーーんのですよ。音楽でも一緒よね。好きなミュージシャンの作品を心待ちにしていて、そのアルバムが最高だったとき、みんなイってしまうと思うのでよ。いやー、本当にハルーン監督は裏切らない!決して!!今回の映画は単なるオヤジの哀しいリストラ映画だと思っていた。所が途中から凄い事になるんですわ。これぞ、アフリカ映画!という想像出来ない展開。ハルーン監督の映画は物語も本当によく練りこまれているし、オリジナリティがある。なんでこの作品が「ブンミおじさんの森」にカンヌで負けたか分からない。私が審査員だったら、パルム・ドール・審査員特別グランプリ・脚本賞・監督賞・男優賞・女優賞を総なめしていた事でしょう(だから審査員になれない)... 「Daratt / 日本未公開 (2006)」ではボイスボックス片手に渋い演技を見せていたユースフ・ジャオロが主演。アダムという55歳の元水泳チャンプで、今はホテルのプールの監視員を演じてます。その仕事が生きがい。大好きなのです。自分の20歳の息子もそこで働いているのです。でも最近になって経営者が変わり、中国から来た女性が支配人。彼女はアダムの友達でもあるホテルの料理人の首を切った。それを聞かされて、焦るアダム。支配人は先にアダムの息子と話していて、アダムはその内容が知りたくて息子に執拗に質問する。でも俺はチャンプだし大丈夫だろうなんて思っていたけど、やっぱりリストラ。しかも息子が跡を継ぐ。でもアダムの場合は実績もあるのでクビではなくて、袖の短いユニフォームを着て駐車場の開け閉め係になる。そこで息子と父の間には溝が出来てしまう。そこから...ですよ、この映画が凄い方向に向かうのは!凄いんです。 父と息子が溝が出来た時に、お母さんが食事を作るのだけど、2人共無言で食べる。お母さんが「せっかく美味しい料理を作ったのに!」と怒るシーンが可愛い。で、お母さんが居なくなった瞬間にアダムは息子に「お前も俺の事を年寄りだと思ってるんだろ?」と意地悪ぽく言う。息子はそんな父さんを無視。その夜にアダムは「若いものには負けない!」と腹筋を始めるのです。なんとも可愛いオヤジなのです。でも本当はいい父親でもあった。息子の事が心配で「どうしたんだ?」といつも気にかける。この「ダークホースが!」と20歳の息子を可愛いニックネームで呼んでしまう。 ところで、今回は私は別の興味がありました。いつもハルーン監督は絵が美しい。色使いが上手く綺麗。それはハルーン監督のものなのか、前作2作を担当した撮影技師アブラハム・ハイレ・ビルのものなのか気になっていた。今回はアブラハム・ハイレ・ビルは撮影技師として参加していないので、ハルーン監督の真価を発揮するのではないか?と思ってました。やっぱりハルーン監督のものでしたね。確かにアブラハム・ハイレ・ビルも凄い才能があるんだと思う。でも今回も色や絵が美しかった。今回は淡い色を基調としているけど、その色とは対照的に絵力がある。プールの水で反射して光るアダムの白いTシャツ、そしてアダムのラストシーンの暗くなった川でのブルーのシャツの淡いイエローのTシャツ。途中で女の子が歌うシーンがあるのだけど、そこも実に感動的。私が内容を書いてない辺りから、私はずーっと号泣でした。 ハルーン監督の祖国チャドの美しさと残酷さが垣間見られる。祖国への愛があるからこそ出来る物語。ハルーン監督は一貫として父親像を描いているけれど、今回のオヤジも頑固だけど愛のあるオヤジ。頑固で硬派でカッコイイんだけどちょっと子供ぽい所もあるアダムをユースフ・ジャオロがまたもや好演。息子役も良かったし、お母さん役と若い女の子も素晴らしかった。 ツイッターではシネマアフリカで上演しないかな?なんて書いたんですが、なんと8/26まで「三大映画祭」で上映中!そして名古屋が8/27からで大阪が9/10から他の作品と上映される予定です!他の地区も徐々に上映される予定だそうで、サイトをチェックしてみてください。騙されたと思ってどんどん見に行ってください!騙しませんから!!私も横浜にきたら行く予定。あの美しさを大スクリーンで体験したいからねー。 (0891本目) |
●● トリビア ベニス映画祭で賞を受賞しているチャド出身の監督マハメット=サレー・ハルーンの作品。今回は2010年のカンヌ映画祭に出展。グランプリを狙う。 今回の物語は現代のチャドが舞台。60歳になるアダムという元水泳チャンピオンが、今はホテルのプールのアテンダントとして働いている。しかしホテルの経営者が中国人になった事で、アダムは首になり息子にその職を渡さないといけないが... 原題は「Un Homme Qui Crie」。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 * The BEST OF SOUL2010 Won Best Director of the Year : Mahamat-Saleh Haroun 2010 Won Best Male Performance of the Year : Youssouf Djaoro 2011 映画秘宝 私が選んだベスト10 2011年度1位 2011 映画秘宝 私が選んだベストガイ : ユースフ・ジャオロ * Cannes Film Festival 2010 Won Jury Prize Best Film : Mahamat-Saleh Haroun 2010 Nominated Palme d'Or : Mahamat-Saleh Haroun * Chicago International Film Festival 2010 Won Silver Hugo Best Actor : Youssouf Djaoro 2010 Won Best Screenplay : Mahamat-Saleh Haroun * Dubai International Film Festival 2010 Won Muhr AsiaAfrica Award Best Actor : Youssouf Djaoro 2010 Won Best Editor : Marie-Helene Dozo 2010 Best Film : Mahamat-Saleh Haroun * RiverRun International Film Festival 2011 Won Jury Prize Best Actress : Djeneba Kone |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt1639901/http://en.wikipedia.org/wiki/A_Screaming_Man http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=340263 |
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