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●● レビュー Mama said knock you outマーテル・”トゥー・スイート”・コードン(レオン・アイザック・ケネディ)はヒッチハイクをしながら、気ままに暮らしていた。娼婦がコードンをピックアップし誘惑した。娼婦が依頼のあったダイナーに行くと、依頼者の白人2人組みがコードンを見て喧嘩となった。後ろから殴られて気を失ったコードンは、刑務所に居た。そこで生き抜く為に彼は拳で立ち向かったのだった。 80年代のカルト映画である。これを観て育った30代・40代のアメリカ人男性は非常に多い。その年代と言えばヒップホップ世代である。彼等はこの生々しい映像を見て、あの態度と姿勢を彼等に取り入れている。ヤラれるか、ヤルか?誰も信用なんて出来ない。自分だけ。欲しい物があれば自分の手で手に入れるのだ。ルールは無用。あって無いような物。これを観るとボクシングはやっぱり不良の物だなと思う。出口の見えない窮屈な環境が、彼等の拳を強くしていく。監督のジャマー・ファナカは特にこういう刑務所経験はなく、ボクシングも自分が空軍に居た時にアマチュアの大会を見て、この脚本を書いたそうだ。ファナカの空想なのに、恐ろしい程に生々しい。この後にも似たような刑務所の中を描いた映画やテレビは数多いが、これがそのパイオニアだ。刑務所という異常な空間は、このように生々しいからこそ観客にインパクトを与え、「若い者達が来るところじゃない」と訴えかけるのだ。台詞も実に単純で明快。難しい哲学はない。でもだからこそ、若者に明確に伝わったのだ。 目に焼きつく映像。ギトギトした男臭い映像が、体にも張り付いているような感覚。そして強烈なパンチを食らったようにハイになる。決して名作ではないけれど、この感覚といい、忘れられない作品の一つにはなる筈だ。 (Reviewed >> 4/27/10:DVDにて鑑賞) |
●● 100本映画 ちゃんと観てみた。80年代のカルト映画。3部作。見た記憶はあるのだけど、この1作目じゃないかも。2作目がおそらく一番有名。ミスターTが一番人気のある頃に出演しているから。でも日本で出たのは3作目。一番ダメな3作目。となると、観た事あるのは3作目かもしれない。実はこれ、うちのオッサーーン1号(2号はデーモン・ウェイアンズで3号はデンゼル・ワシントン。一号以外はもちろん妄想)が持っていたDVDです。かなり好きらしいです。でもなぜか「3」は持ってません。「3」はそういう事です。ジャマー・ファナカが制作。この映画よりも先に制作している「Emma Mae / 日本未公開 (1976)」は佳作。中々面白かった。でもジャマー・ファナカを有名にしたのは、この作品。ジャマー・ファナカはUCLAの映画科の卒業生。というと、「Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)」のチャールズ・バーネットとか「Bush Mama / 日本未公開 (1979)」のエチオピア出身のハイレ・ゲリマに「Daughters of the Dust / 自由への旅立ち (1991)」のジュリー・ダッシュ等が70年代にその映画科で斬新で個性的で芸術性に優れた新しいブラックムービーの波を作っていた頃。でもこの3人とは違ってかなりエンタテイメント性に優れた作品を作っていたのがジャマー・ファナカ。ブラックスプロイテーションの影響も強い。この映画にはかなりの割合で、エロチックな場面も多い。まあ、刑務所での話しなのでそれなりにエロも濃くなりますわね。 ヒッチハイクをして気ままに暮らしていたのが主人公の甘すぎる男前のトゥー・スイート。車なんて拾えなくてもいいか的に、何も無い砂漠の道端で待っていたら、キャンピングカーで体を売りながら商売している白人の娼婦に拾われる。トゥー・スイートはライトスキンで割りと男前。なのでその娼婦に誘惑される。でもタイミング良く(悪く?)仕事の依頼が来たので、トゥー・スイートと共に依頼のあったダイナーに行く事に。しかし依頼者の2人(実は冒頭でトゥー・スイートを見かけてちょっかいを出していたバイカーの2人)が、トゥー・スイートを見かけて激怒。ダイナーで喧嘩になる。後ろから殴られたトゥー・スイートは気を失う。 とココで画面が刑務所に。と...いきなりこんな↓男が登場。 びっくりでしょ?更に...こんな↓男も登場。 こんな映像見せられてしまったら、絶対に刑務所行きはゴメンです。強烈な映像メッセージです。ジャマー・ファナカの衝撃的な映像が脳にこびり付きます。トゥー・スイートはなぜか気がついたら刑務所に入れられていたのです。90年代の終わり頃だったか、2000年の初め頃だったか...HBOで刑務所内のドラマを描いた「OZ/オズ」というドラマが流行りましたが、あれの先駆者。ゲイとかトランスジェンダー(オネエ系)とかも出てくる。また女性刑務所との関わりなんかもある。でもこの映画の主な部分はボクシング。ボクシングの才能によって、主人公がゲイの攻撃から逃れたり、古巣の囚人達からの嫌がらせを逃れたりする。そしてボクシングによって主人公は自由を手にする。そのボクシングと出会った事で、途中からロッキーみたいな感じになる。年老いた囚人からボクシングのテクニックを学んだり、「スクールウォーズ」のイソップみたいなキャラに「お前は誰の物でもないんだ!」と説教したり... 色んなドラマ要素が入ってくる。それと同時進行で、女子刑務所の囚人達とエロいシーンがあったり。お相手となったピーチズ(桃娘)がいい感じである。最初に書いた通り、80年代のカルト映画。今の30-40代のアメリカ男子は釘付けで見た筈だ。このエロい部分もだが、やっぱりボクシングの部分もね。これを観ると、やっぱり亀田親子は正しいのかもねと思ってしまいます。ボクシングは不良の物。ああいう態度がボクシングそのものなのかも...とは思います。特に、こういう刑務所だとやるかやられるか?の世界ですから、やるしかないんです。ルールも無用。タオル投げも意味なし。「あしたのジョー」みたい。だからこそなのか、ボクシングはドラマになる!こういう風に不良が更生するのにはボクシングがピッタリ。「The Education of Sonny Carson / 番長ブルースUSA (1974)」にも似た映像の衝撃がある。ドラマ的には違うけど。 とはいえ、かなり刑務所の映像とか生々しいのですが、全てジャマー・ファナカ監督のファンタジーな世界なのです。刑務所に入った事もないし、UCLAに入る位なのでかなりの優等生だったみたい。インタビューではこう答えてます。「スター・ウォーズを作ったジョージ・ルーカスが宇宙戦争を経験した訳じゃないよね。彼の想像であの世界を作り上げた。私もそうなんだよ」。あのスター・ウォーズとこの映画を並べてしまうところがさすが。この1作目は制作費も全然無くて、大変だったみたい。撮影の最終3日間は出演者にランチを出すお金も使い果たしてしまい、この映画で強烈なオネエ系を演じていたハイ・ファイがフードスタンプ等の寄付を得て、自宅でみんなに料理を食べさせたりしたとの事。でもこの1作目が当たって、2作目は制作費も弾み、あのミスターTも出演(ちなみにドールマイトのルディ・レイ・ムーアも登場している)。で、3作目で大コケしてます。主役は「Cooley High / 日本未公開 (1975)」を観たファナカがグリン・ターマンに依頼して承諾を得たけれど、ちょうどターマンがアレサ・フランクリンと結婚した頃だったので話が流れて、可愛子ちゃんのレオン・アイザック・ケネディに決まった。ターマンは「2」に出演。右上の写真はケネディと元妻でミスコン出身の女優にキスするモハメド・アリ。ちなみに「Emma Mae / 日本未公開 (1976)」はUCLA在学中に制作した作品。ジャマー・ファナカ強烈だな。 (0702本目) |
●● トリビア UCLAの映画科に在籍していたジャマー・ファナカが監督。しかもUCLAに在籍中の作品。人気となり3作も製作されたインディペンデンス映画。 およそ$100.000(約1千万)の低予算で作られた。撮影終了3日前には、制作費を使い果たしてしまい、キャストやクルーに食事も出せない状況になった。オカマ役のハイ・ファイがフードスタンプの寄付を集め、彼の自宅で料理をして賄った。しかしこの映画が興行収入で成功した為、次回作は$250.000(約2千5百万)と跳ね上がり、ミスターTなどのスターを起用した。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt0079709/Not available from Wikipedia Not available from Allcinema |
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