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●● レビュー "White folks gonna lynch me sure when they finds out about this!"ナショナル科学研究所の地下室で女性が死んでいた。夜警員アーサー・ヴァンス(ロレンゾ・マッククレイン)がその死体を見つけ、警察に連絡。死体の近くには「背の高い黒人にこのようにされた」というメモが残っていた。警察はアリバイのないアーサーを逮捕してしまう。そしてその事件から遡ること3年前。弁護士を目指し自分の本を売り歩いていたのがヘンリー・グローリー(クラレンス・ブルックス)。本好きな若い女性クラウディア(ドロシー・ヴァン・イングル)の家にたどり着き本を売った。話しをしていくうちに惹かれあう2人だったが、ふとした間違いから2人は離れ離れになった。そして3年後、ヘンリーは弁護士になっていた。そこに訪れたのがクラウディアだった。クラウディアの兄が容疑者アーサー・ヴァンスであった。ヘンリーは弁護する事になるが... ブラックムービーのパイオニアであるオスカー・ミショーの作品。しかも自分が1921年に制作したサイレント映画を自らリメイク。1913年に起きたレオ・フランク事件を元にしたミステリー・ドラマ。巨匠D・W・グリフィスが制作し映画史のうえでも欠かせる事が出来ない「国民の創生」。しかしその映画は白人至上主義者をヒーローとして称える映画でもあった。そんな「国民の創生」へのアンサー映画として「Within Our Gate (1920)」を作ったのがミショー。しかも自主制作。まったくもってスパイク・リーの元祖な男なのである。そのミショーが探るレオ・フランク事件。他で見るこの事件についての記事や文献とは違うのだ。第一発見者で容疑者にまでなった黒人の容疑を晴らしていくのが、このドラマなのだ。しかも恋愛ドラマの要素を加え、しかも主人公に自分(ミショー)の姿まで反映している。黒人が弁護士という仕事に就くのにどんなに大変か分かるし、そしてホーキンスという黒人の男が、白人の男に脅されてしまう状況も掴みやすい。ホーキンスは言う「そんな事したら白人達が許しませんよ。リンチは決定ですよ!」と怯える。黒人だからそんな筋書きは出来ないと本当の事件で言われたが、実際には黒人だからリンチされる事を分かっていたから出来なかったのだ。 オスカー・ミショーというカッコいい映画人列伝がここにフィルムとして残っているのだ。当時こんな映画を撮れるのは、彼だけだった。なんて男だ! (Reviewed >> 3/24/14:DVDにて鑑賞) |
●● 100本映画 マイケル・ジェイ・ホワイトの映画も大事だけど、オスカー・ミショーはもっと大事。今年はね、MJWとオスカー・ミショーとシドニー・ポワチエという基礎を固めようと思っている。オスカー・ミショーに至っては、もうフィルムが残っていない作品も多いので、全部は見られないけれど、見れる作品は見ておこうという気です。というか、これ見てからミショーの映画をまとめてみました。HP >>Data & Ranking >> ETC >> オスカー・ミショーの映画にあり。文字ばかりのつまらないページかもしれませんが、ミショーの映画リストです。という事でオスカー・ミショー。と言っても、黒人映画に詳しくない人は知らない名前。オスカー・ミショーは黒人映画のパイオニア。一番最初に映画を作った黒人となると、また別の人になるのだけど、ほぼ最初なのがオスカー・ミショー。この人の経歴は面白い。元々は小作人。でも生まれながらの小作人ではなくて、土地を買ってから農業をいちから始めた。そしてその農業での経験を小説にして書き始める。その自分の本をもっと売るために、自分の小説の元に映画を作ってプロモーションしよう!と、映画監督になった。農業から作家になって映画監督になるという発想が面白い!まあとにかくその発想の柔軟さが映画にも生かされている。しかも精力的だった。本を自分で訪問販売する事までやっていた。そして映画を上映するのも、当時ニューヨークで子供時代を過ごしていたウィリアム・グリーブスは「ミショーはカバンを担いでバー等に訪れて映画上映会をするんだ」と語っている。飛び込みとか得意だったのでしょう。という彼の経歴がこの映画には反映されている。そしてこの映画はジョージア州で起きたレオ・フランク事件が元になっている。1913年に鉛筆工場で起きた殺人事件で、ユダヤ人のレオ・フランクは捕まり有罪となり、刑務所で過ごしていた時に狂信的な人々に連れ去られリンチして殺された人物である。しかし後にフランクは無実だったのでは?というのが現代の見解。そしてミショーはそのレオ・フランク事件を元に「The Gunsaulus Mystery」というサイレント映画を制作。そのリメイク作品を自ら作ったのがこの作品。なおオリジナルタイトルは「Lem Hawkins' Confession」で、タイトルには「ハーレム」とあるが、ハーレムは全く関係ない。サンクェンティン刑務所の名前とか出てくる。尚、ミショーはそのレオ・フランク事件の裁判を傍聴していたと、ミショー関連の本には書いてある。 舞台はナショナル科学研究所。夜警員アーサー・ヴァンス(ロレンゾ・マッククレイン)は居眠りから起きて、見回りをすると地下室で女性の遺体を発見した。警察に連絡すると、警官は死体の女性が書いたと見られるメモを発見。そこには「背の高い黒人男性がこんな事をした」と書いてあった。アリバイの無いアーサーは容疑者として逮捕されてしまう。遡ること3年前。本を訪問販売していたヘンリー(クラレンス・ブルックス)は、とある家に居た。近所の女性に彼女は本好きだからと薦められたどりついた家だった。そのアパートの一室には若い女性クラウディア(ドロシー・ヴァン・イングル)が居た。恋に落ちるヘンリーとクラウディアだったが、行き違いや間違い等が生じて3年間会う事も無かった。そして今、弁護士になっていたヘンリーの元を訪れるクラウディア。なんと事件の容疑者はクラウディアの兄であった。弁護を依頼されたヘンリー。クラウディアの機転もあり、事件が少しずつ明らかになっていく... と、ヘンリーとクラウディアは架空の人物だけど、割りとそのままレオ・フランク事件を沿っている。そしてアロンゾ・マンという人がレオ・フランク事件で証言するのが1983年なので、その前の解釈としては非常に面白い。最後の最後まで二転三転するストーリーもさすがだ。そしてこのレオ・フランク事件を黒人側の観点から作られているのが重要な点だ。黒人がそんな緻密な物語を作れる筈がないと言われた裁判。しかしミショーは黒人だからそんな事したらリンチされると知っているから出来ないという解釈。実際にレオ・フランクは黒人ではないがリンチされた。ユダヤ人という理由で。現代ではレオ・フランク事件の真犯人は黒人であると言われていて、黒人の目撃者が1983年に証言している。なぜ目撃者がそんなに時間を掛けたかというと、やっぱりミショーと同じで黒人だからそんな事したらリンチされると信じていたからだ。 そしてミショーは事件を解明していくヘンリーに自分の姿を投影していた。ヘンリーは弁護士になる費用を稼ぐために本を訪問販売していた。ミショーも本を訪問販売していた。そしてヘンリーは事件を解決しようとする弁護士である。ミショーは当時からあるべき黒人の姿と声を映画に残した。偉大な映画人だ。 ちなみにミショー、本当に精力的で、日本にも進出しようとしていたんだよ。来てたら面白かったね。 あ、そしてこの映画にはミショー本人が出ております!警官#2役です!!(リンク先の紙もってる方だよ) (1214本目) |
●● トリビア 黒人映画のゴッドファーザーのオスカー・ミショーが監督・脚本のミステリー映画。 ミショーの1921年サイレント映画「The Gunsaulus Mystery」のリメイク。 オリジナルタイトルは「Lem Hawkins' Confession」。 オスカー・ミショーと妻のアリス・ラッセルが出演している。 音楽は映画「アメリカン・ギャングスター」等の俳優クラレンス・ウィリアムス3世の祖父であり有名な作曲家だったクラレンス・ウィリアムスが担当している。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 |
●● サウンドトラック 1. "Harlem Rhythm Dance" - Clarence Williams2. "Ants in My Pants" - Clarence Williams Soundtracks not available |
●● 関連記事 * 映画秘宝EX最強ミステリ映画決定戦にて映画の紹介 |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt0026741/http://en.wikipedia.org/wiki/Murder_in_Harlem Not available from Allcinema |
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