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●● レビュー Every black person born in America was born on Beale Street.(Reviewed >> 1/24/19:劇場にて鑑賞) |
●● 100本映画 愛によって生まれた『ビール・ストリートの恋人たち』『Moonlight / ムーンライト (2016)』でアカデミー作品賞に輝き、瞬く間に注目監督となったバリー・ジェンキンスの最新作。黒人文学だけでなくアメリカ文学を代表するジェームズ・ボールドウィンの「ビール・ストリートに口あらば」の映画化を次回作にジェンキンス監督は選んだ。監督は人に薦められて読んで決めたという。監督自身が一番注目を集める中で、この原作を選んだこと、それ自体が私にはもう勝者に思えた。なぜなら絶対にまたジェームズ・ボールドウィンの原作を手にする人が増えるからである。そしてこのティッシュとフォニーの物語に初めて触れることになる。それじゃなくても、熱烈な映画ファンならば、この映画をバリー・ジェンキンス監督作品として観る。そしてこの物語を知る。それだけのパワーを今、バリー・ジェンキンスは持っているのである。 「ビール・ストリートとは、ニューオリンズ<正しくはテネシー州メンフィス>の通りの名前で私の父<養父>やルイ・アームストロング、そしてジャズが生まれたところである。アメリカで生まれた黒人全員は、ビール・ストリートで生まれたのだ...」ジェームズ・ボールドウィン。1970年代ニューヨーク、フォニー(ステファン・ジェームズ)とティッシュ(キキ・レイン)は手を繋ぎ歩いていた。視線を交わし「心の準備は出来た?」とフォニーに聞くティッシュ。画面が変わって、刑務所の面会室でガラス越しに受話器でフォニーに妊娠を伝えるティッシュ。フォニーは刑務所にいるはずのない人物だった。職業訓練校で用具の使い方を学び、普段はレストランで皿洗いなどの仕事をこなしていたフォニー。2人は小さい頃からの幼馴染。だからティッシュには分かる。フォニーがあのような犯罪など決して行わないことを。フォニーが語りかけるフォニーとの固く結ばれた愛について... < >は私が付け加えました。そうなんです。ジェームズ・ボールドウィンは間違えていたのです。ボールドウィンが語ったルイ・アームストロングが生まれたところを基準にすると、If Bourbon Street Could Talkが正しいのです。でも実はそれはポイントじゃない。ボールドウィンが語るように、ビール・ストリートはアメリカどこにでも存在する、つまりこれは普遍的なメッセージであり物語なのだと。この間違いにはジェンキンス監督も、もちろん知っていて、「それがポイントじゃない、ビール・ストリートはアメリカ黒人の生活を美しく描き出したとともに、黒人への不正を映し出した小説なんだ。フォニーが経験したことが黒人にとってとても身近なことなんだ」と語っている。確かに、今でも冤罪で捕まる黒人は多い。そんな話を今でもニュースでしょっちゅう見るし、私もツイッターでその手の話を書く。その度に私が憤るのは、冤罪で捕まった人たちにはこれだけの物語があるからだ。ティッシュという可愛くて奥ゆかしく、そして忠実な恋人は居ないかもしれないけれど、無償の愛で寄り添うティッシュの母のような存在や、息子・義息のために何でもやる2人の父親みたいな存在や、妹を守るティッシュの姉のような存在が被害者に居るかもしれず、残された彼らの気持ちを考えると心が痛むのだ。愛にも色々な形があることを知る。 そのようなボールドウィンのメッセージを、バリー・ジェンキンス監督は繊細に美しく描き出す。時には、ニコラス・ブリテルの美しい旋律とともに、そして魂をゆさぶるビリー・プレストンやニーナ・シモンの曲に合わせたり、ステファン・ジェームズとキキ・レインの視線だけで描いてみたり、『ムーンライト』でも組んだジェームズ・ラクストンのカメラに頼ってみたりして。正直、ジェンキンス監督の初長編監督作品『Medicine for Melancholy / 日本未公開 (2008)』の時には、セピアの映像美が圧巻でしたが、そこまで感情を揺すぶられない感じだったのですが、『ムーンライト』からは感情が揺すぶられる。しかもかなり。『ムーンライト』も『ビール・ストリート』も、主人公が脆いからだと思う。脆いとは弱いということでは決してなく、儚いとかそういう意味の脆さ。そういうのを捉え、美しく見せるのが、ジェンキンス監督の巧さ。『ムーンライト』でも、同性愛者というマイノリティの苦悩を捉え、そして彼らの愛の姿を美しく見せた。今回は若いカップルが直面する困難を描き、そしてまた彼らの愛の姿を美しくそして強く見せた。 この映画で語られる様々な「愛」。しかし今テレビで流れてくる悲惨なニュースに「愛」など全く感じない。虐待にテロに人種や国をターゲットにした誹謗中傷ばかり。時代に逆行しているからこそ『ビール・ストリート』のメッセージを儚く、そしてそこに多様な愛の強さを感じたからこそ、美しく感じるのだ。 (1673本目) |
●● トリビア ジェームス・ボールドウィンの「ビール・ストリートに口あらば」が、『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督により映画化。『グローリー/明日への行進』のステファン・ジェームスと新人のキキ・レインが主役に抜擢。『レイ』などで知られるベテラン女優レジーナ・キング等が共演。 2018年トロント映画祭にてワールドプレミア。 全米公開が、11/30/2018→12/25/2018に変更。限定公開は12/14/2018から開始。日本公開は2/22/2019から。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 *映画秘宝 4月号にて『ビール・ストリートの恋人たち』&『グリーンブック』レビューを寄稿。(2/21/19) |
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●● インフォサイト https://www.imdb.com/title/tt7125860/https://en.wikipedia.org/wiki/If_Beale_Street_Could_Talk_(film) http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=366278 |
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