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●● レビュー Cry me a river, white people...スキーター(エマ・ストーン)は大学を卒業し、作家を目指して故郷のミシシッピー州ジャクソンに戻ってきた。友人のヒリー(ブライス・ダラス・ハワード)をはじめみんなが結婚し所帯を持っていた。母や友人にプレッシャーを掛けられるが、スキーターは新聞社の主婦向けのアイデアを紹介するコラム担当になって嬉しかった。家事の経験のないスキーターは、友人宅で働くメイドのアイビリーン(ヴァイオラ・デイビス)に色々と情報を貰うのだった。スキーターは友人達がメイド達をぞんざいに扱う姿を見て、アイビリーンにメイドとして働くという事を語って欲しいと頼む。そのメイド達の声を一冊の本にしたいと思うスキーターだった。しかしアイビリーンは頑なに断る。ミシシッピーでそのような事をすれば、リンチされ死が待っていたからだった。 上映前から現代にもなって黒人女性がメイドを演じる事で論争にもなった作品。しかしメイド役を演じたヴァイオラ・デイビスは、是非見て判断して欲しいと同胞達に語った。私もどうせまた「しあわせの隠れ場所」の二の舞なんじゃないかという色眼鏡で見た。確かに未だにマミーのイメージが消されているわけではないが、それを払拭するに等しい面白さがあった。アイビリーンはヒーローじゃないが、スキーターもヒーローじゃない。彼女2人には今となってはごく普通のモラルとホンの少しの勇気があっただけだった。この映画の面白さは物語そのものよりも、演技に頼る所が大きい。芯の強い女性を演じたヴァイオラ・デイビス、そして愛らしいエマ・ストーン、映画史上最高に豪快なイタズラで笑わせてくれたオクタビア・スペンサー、完璧な母親像ではないけれど現実的な母親を演じたアリソン・ジャニー、完璧な悪役を演じたブライス・ダラス・ハワード、か弱い女性を演じたジェシカ・チャステイン、みんなが素晴らしかった。でも何といってもシシリー・タイソン。彼女が居るだけで威厳を感じた。 完璧な物語ではないけれど、中々面白い物語になっている。しかし白人の人たちは自分達の罪をサディストに描写するのがお好きですね。 (Reviewed >> 10/8/11:劇場にて鑑賞) |
●● 100本映画 アメリカでサプライズ大ヒットとなった作品。なぜこのCGや特殊エフェクトの無い大人しい映画が1位になったのだろうか?「The Blind Side / しあわせの隠れ場所 (2009)」の2番煎じと言ってしまえば、残酷かもしれないが、そんな雰囲気を感じていた。というのも、公開と同時に一部黒人の学者や観客から猛烈な批判を受けたからである。批判というのは、なぜこのご時勢にオスカーにまでノミネートされたヴァイオラ・デイビスがメイド役を演じなくてはいけないのか?という点だった。黒人にとって、特に黒人女性にとって、メイドの姿はステレオタイプである。そのオスカーを最初に獲得したHattie McDaniel (ハティ・マクダニエル)は、「風と共に去りぬ」のメイド役でオスカーを手にした。彼女の役名はマミー。人の名前ではなくて、子供の世話係という意味だ。黒人女性にとって、メイドやマミーの姿はトラウマである。彼女たちが虐げられていた過去が蘇るからである。そしてこの映画の元となった原作の本は白人女性が書いている。黒人女性の声が反映されていないのではないか?というのも大きな論争の一つになっていた。 この映画はアメリカの中...ジムクロウ時代(南部での黒人別離が平然と行われていた時代)の中でも一番厳しく黒人を差別していたミシシッピーのジャクソンが舞台。そこに戻ってくるのが、ミシシッピー大学を卒業したばかりのスキーター。スキーターは作家になりたくて、地元の新聞社でなんとか主婦向けのコラムを担当する事になる。しかし主婦の経験のないスキーター。しかも周りの友達はみんなすでに結婚しているのに、スキーターだけ独身で家族や友達からプレッシャーをかけられている。友達はすでに家庭を持って、みなメイドを雇っている。友達の中でもリーダー格のヒリーは社交の場(今で言う所のママ会)を切り盛りしている。しかしヒリーはセリアという女性を仲間外れし、黒人には辛く当たる。ヒリーのところで働いているのがミニーというメイド。ミニーの親友でやはり別の家のメイドをしているのが、アイビリーン。アイビリーンは主婦の経験のないスキーターに、こっそりと家事のコツを教えている。なんでこっそりかと言うと、ミシシッピーでは黒人と白人が仕事以外で仲良く話す事も許されていないからだ。ヒリーは黒人と白人のトイレを分けるべきだと主張している。それは家の中で働いているメイドも同じ。ヒリーは病気がうつると信じている。しかし彼女たちの子供たちを面倒見ているのはメイドなのだ。メイドたちには外の粗末なトイレが与えられている。それに疑問を感じていたのがスキーターだった。スキーターはメイドの声を本にしたいと、いつも助けてもらっているアイビリーンに歩みよるのです。 まあ中々面白い。強烈なエピソードが沢山あります。スキーターがなんでメイドにあそこまで感傷的になるのかもしっかりと描かれているので納得できますね。そこが「The Blind Side / しあわせの隠れ場所 (2009)」とはちょっと違いますかね。スキーターのマミーだったのが、シシリー・タイソンが演じたコンスタンティン。もう彼女がスクリーンで南部女性を演じるだけで涙が出てきた。絶対的な存在感があります。物語もそこそこ面白いのですが、この映画はみんな演技が素晴らしい!あの「ゾンビランド」で強烈にカッコ良かったエマ・ストーンが、ここでは見事なサウザンベレに変身。私はサンドラ・ブロックの演じた南部女性よりも、エマ・ストーンが演じた南部女性の方が好き。完璧じゃない所がチャーミング。先に書いたシシリー・タイソンは当たり前のように素晴らしかったし、ヴァイオラ・デイビスも最高。ミニー役のオクタビア・スペンサーは評判通りにコミカルで豪快で素敵な女性を演じてました。あのパイのエピソードは強烈。これは映画で見て驚いて欲しい!映画史上最高の「スウィート・リベンジ」でした。ボケたお婆ちゃんを演じたシシー・スペイセクも面白かった。やたらと暗くて感情的だった「The Long Walk Home / ロング・ウォーク・ホーム (1990) 」より、こちらの方が爽快で全然良い!スキーターの母役アリソン・ジャニーも難しい役を凛と演じていて素敵。イジメられっ子のセリアを演じたジェシカ・チャステインも天真爛漫で泣けてきた。酔っ払ってしまうシーンは見もの。でも一番見事だったのが、いじめっ子のヒリーを演じたブライス・ダラス・ハワードですね!完璧な悪役。自分のメイドには酷いのに、アフリカの飢饉には同情的という、矛盾だらけの女性をハツラツと演じてましたね。とにかく女優の一人一人が輝いてます。ヴァイオラ・デイビスとオクタビア・スペンサーはすでにオスカー候補ではないか?と予想されています。 で、何で黒人の観客からは一部ボイコットまで発生したのに、この映画が全米興行成績で大成功を納めたか?ですよね。白人の観客は昔の良かった時代にノスタルジックに戻る事が出来る。昔の良かった時代というのが、残念ながらジムクロウ時代とリンクしているのが皮肉。と同時に、自分たちの過去を自虐的に表わす事で、(黒人ではなくて白人の観客の)心を癒しているのですよ。自分たちはヒリーじゃなくて、スキーターやセリアだと思うからこそ、観客を引き付けたのでしょうね。 (0907本目) |
●● トリビア 「Doubt」でのオスカー助演女優賞のノミネート以来注目を集めているヴァイオラ・デイビスが出演の作品。キャスリン・ストケットのデビュー作でベストセラーとなった「The Help」の映画化。内容は公民権運動時代の1960年代にミシシッピで生活していた3人の女性の物語で、デイビスはメイドを演じる。 全米公開日が2日早くなり、8/12/2011から8/10/2011に変更。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 * The BEST OF SOUL2011 Won Best Female Supporting Performance of the Year : Octavia Spencer 2011 映画秘宝 私が選んだベスト10 2011年度6位 |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt1454029/http://en.wikipedia.org/wiki/The_Help_(film) Not available from Allcinema |
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