|
|
●● レビュー 4 little girls loss, 4 million tears1963年アラバマ州バーミングハムの教会。いつもと同じ日曜の朝。住民は朝から教会に行く準備をしていた。4人の少女、アディ・メイ・コリンズ、デニス・マクネア、シンシア・ウェズリー、キャロル・ロバートソンもそうだった。4人はコーラスの準備をしようとしていた、その瞬間彼女たちの体は強い衝撃により飛ばされた。教会に爆弾が仕掛けられ、彼女たちはそれにより亡くなったのだった。スパイク・リー監督が残された両親や家族に当時と4人の少女たちの事を、およそ30年後に振り返ってもらい話を聞いているドキュメンタリー。 スパイク・リー構想10年。NY大の映画科に進んですぐの頃に、たまたまニューヨーク・タイムスでこの事件の話を読んで、まだ学生なのにこの映画を撮ろうと、デニス・マクネアの父親クリスに手紙を書いた事から、この映画の歴史は始まる。1983年の事だった。しかし、実績もないリーに対して、クリスは却下した。まだ話したくないという理由もあった。当たり前の事である。それから10年以上たち、リーは『ドゥ・ザ・ライト・シング』や『マルコムX』などで時を動かす映画監督へとなり、黒人の間で知らぬ者はいない程に成長。やっとこの映画が実現する事になったのだ。 この事件は当時キング牧師もかなり落胆した。4人の少女が教会という場で犠牲になった事は、キング牧師を苦しめた。スパイク・リーは亡くなった4人の少女のそれぞれの性格を明らかにする事で、この事件がいかに非道で最低な事なのかを改めて人々に突きつけている。4人の両親の喪失感ははかり知れない。そんな中で一人の妹がこの事件のせいで、パニック障害になっているのが、とても衝撃的だった。30年経っても未だに回復する事はない。 あの爆弾は、少女4人の尊い命を奪っただけでなく、彼女たちの家族や友人が十字架を背負って何十年も涙を流す事になったのだ。 (Reviewed >> 6/15/15:DVDにて鑑賞) |
●● 100本映画 スパイク・リーが「監督として」アカデミー賞に一番近づいた作品。と言っても、監督賞ではなくて、ドキュメンタリー部門なんですけどね。しかもノミネートで受賞は逃した。この年に取ったのは、ユダヤ系のドキュメンタリー。まあそうなるよね、ハリウッドだもん、仕方ないよね。この作品書いてなかったので、久々に再見してみました。いいですね、やっぱり。1963年9月15日の日曜日。バイブル・ベルトと呼ばれる敬虔なキリスト教徒が多く存在するアラバマ州バーミングハムでは、日曜の参拝の為に毎回そうであるが、慌しい朝を迎えていた。アディ・メイ・コリンズ、デニス・マクネア、シンシア・ウェズリー、キャロル・ロバートソンの4人の少女もいつもと変わらない日曜日の朝を過ごしていた。彼女たちの家族も同じ。まさか、玄関口での会話が最後の会話になろうとは思ってもいなかった。4人は他の約20名の子供たちと共に朝の説教を聴く予定で、地下にある部屋に向かっていた。その途中で4人はクー・クラックス・クランが仕掛けた爆弾で命を失った。 この映画が好きなのは、事件そのものと言うよりも、4人の少女の姿を追った所。30年経てもまだまだ傷が癒えていない遺族たちが語る4人の少女の姿。だからこそ親身に感じ、彼女たちの死の悲しみがより一層深くなる。フレンドリーだったデニス・マクネア、ユーモアがあったシンシア・ウェズリー、道端で死んだ鳥を見かけお葬式をしてあげたという優しいアディ・メイ・コリンズ、音楽の才能に長け頭も良かったキャロル・ロバートソン。彼女たちの失われた30年。もう取り返す事が出来ない。どんな大人になっていただろう?家族は想像しかできないのだ。犯人たちはなぜ少女4人の命を奪うほどに憎悪を感じていたのか?到底理解は出来ない。いや理解もしたくない。犯人たちもさすがに幼い4人が被害者になるとは思ってもいなかったと思うさすがに。せめてそうであって欲しい。でもそうなってしまった。犯人たちのせいで。 スパイク・リーはこの映画を大学時にニュース記事を読んで、自分で撮りたい!と思い、デニス・マクネアの父に手紙を書いた。しかし彼の答えは「ノー」だった。まだ傷も癒えていないし、第一スパイク・リーって誰なんだよ!という事である。まだまだスパイク・リーという名前が売れる前の事。スパイクは断念するが、忘れてはいなかった。『Do the Right Thing / ドゥ・ザ・ライト・シング (1989)』や『Malcolm X / マルコムX (1992)』と一躍時の人となったスパイク。満を持してこの作品に取り掛かったのである。もう「スパイク・リーって誰?」とは言わせない。黒人映画監督としてナンバーワンの知名度なんだから。 なのでこの30年というのは、遺族にとってもスパイクにとっても絶好の機会となったのだ。しかし30年という年月を経ても、家族の傷が和らいでいない事を見て取れる。遺族は未だに涙を流す。そして爆発時にその現場に居て、自分も傷を負ったアディ・メイ・コリンズの姉妹は、パニック障害に苦しみ、今でも建物内にいるのが怖くてパニックになる(ちなみにアディ・メイのもう1人の姉妹は出てこないが、彼女は片目を失明している)。突然人の命を奪う殺人ってそういうものなのだ。1人の人が殺されたら、その何十倍もの人々が涙を流し、ずっと引きずって生きていく。第2次被害、第3次被害... 分かるか?殺人者たちよ。 スパイクはあの「今日も人種隔離を!明日も人種隔離を!永遠に人種隔離を!!」と叫び、映画『Selma / グローリー/明日への行進 (2014)』にも登場する元アラバマ州知事ジョージ・ウォレス本人もインタビューしている!これがとっても滑稽で最高だった!怖いもの知らずのスパイクなので、どんどんと率直な質問を浴びせる。ウォレスは「待ってくれよ、私は差別者じゃないんだ。私の一番の親友は黒人だよ」と、その”親友”のエドを呼ぶ。どうやらエドさんは、ウォレスの身の回りの世話をしている人。「私はエドを連れて日本やヨーロッパにも行ったんだ」と意気揚々と話しているが、エドの顔が絶妙に微妙な顔をしていて、エドの顔を見れば”親友”なんかじゃなくて、ただ仕事だから一緒に行ったという事がすぐに分かってしまうのだ。言葉なんて要らない表情だった。 この映画こそスパイク・リー渾身の!というのにふさわしい作品なのだ。そしてスパイクのトップレベルの作品であることも間違いない。 (1377本目) |
●● トリビア スパイク・リーが監督したドキュメンタリー。アカデミー賞のドキュメンタリー作品部門にノミネートされた。 1963年におきたバーミングハムでの悲劇を追う。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 >> Academy Awards, USA1998 Nominated Best Documentary, Features : Spike Lee, Samuel D. Pollard >> Acapulco Black Film Festival 1998 Nominated Best Director : Spike Lee >> Broadcast Film Critics Association Awards 1998 Won Critics Choice Award Best Documentary >> Emmy Awards 1998 Nominated Outstanding Achievement in Non-Fiction Programming - Cinematography 1998 Nominated Outstanding Achievement in Non-Fiction Programming - Picture Editing 1998 Nominated Outstanding Achievement in Non-Fiction Programming - Sound Editing 1998 Nominated Outstanding Achievement in Non-Fiction Programming - Sound Mixing 1998 Nominated Outstanding Non-Fiction Special >> Image Awards 1999 Won Outstanding News, Talk or Information Special >> International Documentary Association 1998 Nominated Feature Documentaries : Spike Lee, Samuel D. Pollard >> National Educational Media Network, USA 1999 Won Gold Apple >> Online Film Critics Society Awards 1998 Won Best Documentary >> Satellite Awards 1998 Won Best Documentary Film : Spike Lee , Samuel D. Pollard |
●● サウンドトラック Terence BlanchardSoundtracks not available |
●● 関連記事 *映画秘宝 5月号にてスパイク・リー作品ベスト5にて寄稿。(3/20/19) |
|
●● インフォサイト http://imdb.com/title/tt0118540/http://en.wikipedia.org/wiki/4_Little_Girls Not available from Allcinema |
|
|