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●● レビュー "You got robbed too"この映画監督ダリアス・クラーク・モンローはNY大の映画科に通い、インディペンデンス系やショート作品などでも賞に輝き、スパイク・リーに習った新進系映画監督だ。しかし彼は16歳の高校生の時、地元ヒューストンにて銀行強盗をやり、5年間刑務所暮らしをしていたのだった...そんな彼自身が振り返る犯罪と、後悔、そして謝罪... こんなドキュメンタリーは彼、ダリアス・クラーク・モンローしか作れないであろう。自分が犯した罪を自分自身で追う。今まで観て来たドキュメンタリーは他人が振り返るばかりであった。犯罪の動機や、その後の後悔、そして謝罪までは、他人の監督でも撮れる事。しかし、この映画を撮る事で、彼自身が深い自責の念を感じ、罪の購いにより、開放されていくのを感じるというのは、そうそう無い事だ。厳しい生活を虐げられている家族のためにと実行した銀行強盗は、その場に居合わせた被害者はもちろんの事、自分の家族まで深く傷つけてしまう。それを自らのカメラで追うのだった。 あの日、たまたま銀行で居合わせた牧師は、謝罪に来たダリアス・クラーク・モンローにこう話す。「お前も強盗に遭ったんだ。若い貴重な時間を無駄にしたんだからな」。なんとも不思議な感情を呼び起こすドキュメンタリーだ。 (Reviewed >> 1/22/15:TV放映にて鑑賞) |
●● 100本映画 セカンド・チャンス。アメリカでは一度間違いを起こした人でも、セカンド・チャンスで人生を転換し成功させる人々がいる。マルコムXがその代表かもしれない。この映画の監督ダリアス・クラーク・モンローもその1人だ。高校3年生の16歳の頃、ダリアス・クラーク・モンローは、地元ヒューストンの銀行で強盗をした。元々は学業も優秀な方で、先生からの信頼もあった生徒だった。その頃に、家が強盗にやられた。多くの物を失い、元々裕福ではなかったので、その強盗被害で生活は益々厳しいものになってきた。父は2つの仕事を掛け持ちし、母も仕事をしていた。ダリアスは家計を助けるために、ビデオデッキを盗んで転売を始めた。そして更に進化させ、ダリアスは友達のトレイとピエールとで銀行強盗を計画する。ダリアスが計画し、トレイが運転手、ピエールは武器係。3人は学校を上手く早退し、公衆電話から学校に爆弾を仕掛けたという虚偽の電話をかけて、学校と警察を混乱させた。その間に地元の銀行に向かい、見事強盗に成功した。と言っても、最初に銀行に踏み込もうとした時に、やっぱり怖気づいたらしく、車に一旦戻った。そんな時に車のラジオから流れてきたのが2パックの「Hail Mary」... 3人はその曲にハイになって、銀行に踏み込んだのだった...Come with me, Hail Mary, Run quick see, what do we have here, Now, do you wanna ride or die, La dadada, la la la la... 再現シーンも交えながらのドキュメンタリー。主にダリアスの家族が当時の状況を振り返って語っている。一瞬にして家族の雰囲気は様変わりしてしまったと泣きながらに語る母。「家族の為に...」とした事なのに。16歳なのに凄い機転で強盗を成功させた。しかもその後も4週間は普通に学校に通っていたのだ。ピエールが友達に自慢してバレて捕まった。ピエールは起訴されなかったのか、この事件で禁錮刑となる事はなかった。先に捕まったという事は、多分他の2人を売って免れたのであろう(ダリアスはその件は語らず、そしてピエールを責めてもいない)。ダリアスは5年(3年とも?)刑務所暮らし、トレイは何年か分からないが起訴されて禁固刑となって、今は普通に暮らしている。ピエールは別件で捕まって刑務所を経験しているようだ。結局はそういう事。いずれは捕まる。つまりは償うか?欲が益々出るのか?という事だ。 ダリアスは刑務所内で、勉強をしっかりとやった。その後はヒューストン大に通い、その間にTV局大手のABCにてインターンを経験。ヒューストン大後には、名門ニューヨーク大学の映画科となるTischに進む。そこではスパイク・リーの下で学んだ。その時の卒論の映画制作について1対1で話した時にこの映画の事を話、インタビューをお願いしたら、インタビューは断られたけれど、制作総指揮としてならと快諾し、この作品を世に出す事を約束してくれたらしい。最近のスパイク・リー先生は、本当に後輩の育成に熱心で素晴らしい!スパイク先生の下から巣立った生徒が多いこと、多いこと! そして犠牲者にも訪れて、ダリアスは詫びている。その場にたまたま居合わせた銀行のお客さんたち。その1人が教会の牧師をしている男性。彼は貰った給料の小切手を銀行に持って行った所で、ダリアスたちの強盗に遭遇。いちよう書いておくと、この銀行強盗では死者も怪我人も出ていない。しかしみんな恐怖を経験してしまったのだ。その牧師さんはダリアスに向かって「お前も強盗に遭ったんだ。大事な若い頃の時間をな...」と語る。なんとも言えない不思議な感情がやってくる。こういう事が言えちゃうなんて。でも別の人は「今回謝りに来てくれた事はありがたいが、毎年来るとかそういうのは止めてくれよ」とハッキリ言う人も居る。自分のしでかした罪を実感する瞬間だったと思う。ガッカリかもしれないが、それが現実なのだ。 ダリアスの開放への旅が見られる。アメリカでは2度目のチャンスがある。改心すれば、必ずドアは開かれる。この先、開放されたダリアスという人がどんな映画を作り語ってくれるのか、楽しみである。 (1325本目) |
●● トリビア スパイク・リーと同じ映画人としてエリートの道を進む事になるNY大の映画科に進んだ新進映画監督ダリアス・クラーク・モンロー。彼は10年前に地元ヒューストンで大手銀行「バンク・オブ・アメリカ」にて強盗を働いた犯罪者だった。そのモンローが10年ぶりに故郷に戻り、家族・友人、そして犠牲者に会うのだった...というドキュメンタリー。スパイク・リーがエクゼクティブプロデューサーとして参加している。 映画祭やNYで限定公開された後、2015年1月にPBSの「Independent Lens」にて放送。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 * Black Reel Awards2015 Nominated Outstanding Independent Documentary : Darius Clark Monroe * Chicago International Film Festival 2014 Nominated Audience Choice Award : Darius Clark Monroe * Cinema Eye Honors Awards, US 2015 Nominated Outstanding Achievement in a Debut Feature Film : Darius Clark Monroe * Independent Spirit Awards 2015 Nominated Truer Than Fiction Award : Darius Clark Monroe * St. Louis International Film Festival 2014 Won Joe Pollack Award Best Documentary Feature : Darius Clark Monroe |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt1096999/Not available from Wikipedia Not available from Allcinema |
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