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●● レビュー I always lieクレイ(アル・フリーマン・ジュニア)はあまり人の乗っていないニューヨークの地下鉄に乗っていた。ある駅で止まった時に、窓の向こう側に美しい女性ルラ(シェリー・ナイト)が立っていて、クレイを見つめ、誘惑するような仕草を見せた。一瞬の出来事で、電車は動こうとしていた。幻を見たと思っていたクレイは、次の瞬間にルラが同じ電車に乗り込んだのを知った。ルラはクレイに話しかけ、2人は話すようになるが... リロイ・ジョーンズ(現アミリ・バラカ)の書いた戯曲の映画化。リロイ・ジョーンズは有名な詩人であり音楽についての造詣も深い。彼は前衛的で先鋭的な60年代のビート世代を駆け抜けた詩人。マルコムX暗殺を機にリロイ・ジョーンズからアミリ・バラカに変えてしまい、白人の妻と別れハーレムに移り住んでしまい、より先鋭的にブラックナショナリストとなってしまう。しかし、この戯曲はそのマルコムX暗殺前に書かれ、上演された作品の映画化。しかしアメリカでは映画化されずにイギリスに渡って映画化されている。 「ダッチマン」という奇妙なタイトルは「フライング・ダッチマン」という伝説から取られている。ジョーンズはこの舞台になった地下鉄こそが、現代の神話が堆積されていると言う。その地下鉄の電車の中で白人の女性と黒人の男性が繰り広げる神話の縮図が今回の物語。白人の女性は色目を使い、黒人男性に話しかける。しかし彼女は全くその男性には興味がない。会話だけで進められているが、最後には悲劇を迎える。そしてその犠牲者は黒人男性だ。そしてこのドラマでりんごが頻繁に食べられるのは、アダムとイヴの話から来ている。白人と黒人の関係をアダムとイヴに例え、その関係性をケインとアベルに引き継がれる問題としても考えられる。 タイトルの元になった「フライング・ダッチマン」はアフリカのケープタウン近海でオランダ人船長が呪われ、船長は幽霊として永遠に彷徨い続ける事になった。クレイ...つまり黒人男性の無念さは、幽霊として永遠に彷徨い続けるのだ。 (Reviewed >> 9/28/11:DVDにて鑑賞) |
●● 100本映画 アミリ・バラカがリロイ・ジョーンズ時代に書いた戯曲の映画化。アミリ・バラカは、戯曲化であり詩人であり音楽にも造詣が深い。ラトガース大学にハワード大学にコロンビア大学でも学んでいたが、学士は取得していない。アメリカの空軍にも従事したが、本を沢山持ちすぎていた事で不名誉除隊している。その本の中に「共産党宣言」があったと言われていて、仲間からの告げ口により除隊させられた。当時をバカラはこう語る。「誰かが、俺が共産主義だと言ったのさ。それは40年後に真実となったのだが」。という事で今は共産主義。でもこの戯曲を書いていた頃は、グリニッジ・ヴィレッジに住み白人でユダヤ系の作家の女性と結婚し、ビート世代にどっぷりと足を踏み入れていた。そしてこの作品は舞台の有名な賞の1つであるオビー賞を受賞している。映画化になった時には、バラカはブラックナショナリズムに傾倒。マルコムXが暗殺された後(1965年)には、その白人の妻と別れて、ハーレムに戻ってしまうのです。ちょうどその頃に出来たのがこの映画。でも先に書いたように元となった戯曲はビート世代の頃。この作品は地下鉄の電車の中だけで起こる出来事を描いている。身なりのいい若い黒人男性と、その男性よりちょっと年上の白人女性が主役。黒人男性クレイを演じているのが、「Malcolm X / マルコムX (1992)」でイライジャ・ムハマドを演じたアル・フリーマン・ジュニア。クレイは電車に乗っていると、止まったプラットフォームに白人女性が居るのに気づく。彼女は明らかにクレイを誘惑する仕草を見せた。しかし電車は出発したが、さっきの女性がクレイのもとに現われる。彼女はルラという。「私の事見つめていたでしょう?」とルラはクレイに話しかける。クレイは「いや、見ていただけだ」と返す。車両には彼らしか居なかったのもあって、2人は会話を始めるのです。しかしそれはある悲劇を生むきっかけとなってしまうのです。 バラカが...いやジョーンズが地下鉄を舞台に選んだ理由に、「現代の神話がつまっているから」と答えている。ダッチマンという題名も「フライング・ダッチマン」から取られている。そしてルラが電車に乗り込んだ時に後ろに見える社内広告には全文がハッキリとは読めないようになっているが「ダッチマンが...」という文字が書かれた広告がある。Fine Cigarと書かれているので、おそらく葉巻の広告だ。 そしてクレイを必要以上に誘惑するルラ。彼女はその間絶え間なくリンゴを食べる。これもジョーンズは、アダムとイヴの話を使っている。クレイを誘惑し、そして今度はルラが騒ぎだして、クレイを恥じらいと怒りの方向へ挑発する。そんなルラにクレイは「いつか誰かに殺されるぞ」と言うが、実はその台詞には裏があったいう訳です。 ルラはアメリカを象徴しているとも言われている。特に白人のリベラル。ルラは「私はいつも嘘つくのよ。沢山ね」という台詞とかもあり、それを考えるととても政治的な訳です。クレイは黒人男性のジレンマ。実に切ない深いドラマなんです。さすがにリロイ・ジョーンズ、前衛的。その前衛的な部分を上手く映像化してみせたのがこの作品が監督デビュー作になるアンソニー・ハーヴィ。この次の作品「冬のライオン」でアカデミー賞の監督賞にノミネート。しかし、ルラ...いやアメリカなんですな。この映画を1967年にアメリカで作らせる事はなかった訳ですよ。 (0905本目) |
●● トリビア 詩人アミリ・バラカの戯曲が映画化。舞台はアメリカだが、イギリスで制作。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 * Venice Film Festival 1967 Won Volpi Cup Best Actress : Shirley Knight 1967 Nominated Golden Lion : Anthony Harvey |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt0060358/http://en.wikipedia.org/wiki/Dutchman_(film) Not available from Allcinema |
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