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●● レビュー "Am I Black Enough for You?"多くの黒人の若者が送り込まれたベトナム戦争。激しい戦火を潜り抜けてアメリカに戻ってきても、彼らの待遇は良くならなかった。そんな中、カリフォルニア州オークランドでは「黒豹党(ブラック・パンサー党)」が台頭してくる。彼らは「10項目網領制定」で、黒人の若者たちを魅了していく。そのころにはエルドリッジ・クリーバーの「氷の上の魂」がベストセラーになっていた。ベトナムで銃を握っていた若者たちが、オークランドや全米各地で自ら銃をとって黒豹となっていく... そんな激動の黒豹党を、ドキュメンタリーを取り続ける鬼才スタンリー・ネルソンが追っていく。 公民権運動でも非暴力の精神を貫いた「フリーダム・ライダーズ」を追った『Freedom Riders / 日本未公開 (2010)』のスタンリー・ネルソンが、今回は黒豹党を追う。彼は50人近くの元黒豹党員や、関わった人々に話を聞き、フィルムに残した。しかし今回登場するのは30名ほど。残された当時のフィルムと関係者たちの鮮明な記憶によって、当時の黒豹党がよみがえっている。どうして黒豹党は若者に受け入れられたのか、どのように広がっていったのか、そしてどのように沈んでいったのか... 様々な角度から浮彫となっていく。 黒豹党の興隆と衰亡。どちらも若さ故であった。それはとても哀しく、そして切なく聞こえた。 (Reviewed >> 2/18/16:DVDにて鑑賞) |
●● 100本映画 黒豹党。ブラックパンサー党。のドキュメンタリー映画。ドキュメンタリーを取り続けるスタンリー・ネルソン監督。ネルソンは大学の映画学校を出てから俳優から監督となったWilliam Greaves / ウィリアム・グリーブスに師事してドキュメンタリー作りを学んだ。ドキュメンタリーを取り続けた事で「天才賞」とも言われているあのマッカーサー・フェローシップを受賞している人である。そのネルソンが挑んだ黒豹党の姿。PBSにて放送。同日にDVDなどのメディアも発売。PBSで見るか悩んだけれど、DVDで見ました。シカゴが生んだ人気コーラスグループ「シャイ・ライツ」が、ソウルトレインにて「(For God's Sake) Give More Power to the People」を歌っていた。それから遡る事1966年、ヒューイ・P・ニュートンとボビー・シールにより黒豹党(Black Panther Party)がカリフォルニア州オークランドにて結成され、彼らは警察官を監視するためにパトロールを始めた。州都のサクラメントでの州議会に銃を持って出向き、ボビー・シールが黒豹党行政命令1号を読み上げた。当時のカリフォルニア州知事ロナルド・レーガンが丁度外でプレスカンファレンスをしていたのもあって、これがニュースで流れ一気に黒豹党に注目が集まる。新入部員数が大量に増えた。10項目綱領を制定。『氷の上の魂(Soul on Ice)』を書き注目を集めていたエルドリッジ・クリーバーも加入。クリーバーの聡明な点も若い人々を惹きつけた。全国にも飛び火していく黒豹党の人気。しかし、それが原因で J・エドガー・フーバーが指揮する黒人組織を潰す目的のFBIの「COINTELPRO」のレーダーに引っかかってしまう。黒豹党の運命を当時のメンバーなどが語っていく。 どのようにして、そしてどうして黒豹党は黒人の若者を惹きつけたのか?が、よーーーく分かるドキュメンタリーです。なにせ実際に魅了されてメンバーになった人たちが語っているのですから!なるほどね、と思ったのが、「ベトナム戦争に行って銃を持たされ戦わされた。でもアメリカに帰ってきたら、尊敬されるどころか、黒人である以上差別が待っていた。外で敵とも思っていないベトナム人と戦ったんだから、国内で銃を持って差別と戦う必要があると思った」という点。そして肝心の「10項目綱領」が分かりやすい!簡潔だし、言葉も分かりやすい。何しろ「We want」と要求しているのがカッコよく映る。黒人は美しいという「ブラック・イズ・ビューティフル」同様に、彼らの毅然とした態度と、自分たちの姿に回帰したアフロ、そして黒の革ジャンは、黒人の若者たちにプライドを取り戻させた。奴隷だった時代は生きていくためにプライドを無理矢理捨てさせられた訳でしたから。そんな彼らにプライドを取り戻させたのが、マルコムXと黒豹党だった。 逆に意外だったのが、キング牧師の事は彼ららしい痛烈な言葉で批判しているかと思ったら、そうでもなかったのが印象的。キング牧師が暗殺された1968年4月4日を振り返った時、「奴らは我々の最後のチャンスを殺したんだ」と語っていた。その言葉で彼らがキング牧師の政策を批判はしていたけれど、ちゃんと敬意を払っていたのはよーーーく分かった。そして「黒豹党」という名前は、豹は追い詰められない限り攻撃はしない、一度引いてみる、しかしそれでも追い詰められた時に初めて攻撃に出てやり返すという、豹の習性からつけられている。あと、アラバマ州(ヒューイ・ニュートンの自伝にはミシシッピとなっているが間違い)のLowndesという郡にあった組織が、黒豹をマークにしていて、それを見てヒューイ・ニュートンが提案し採用されている。 気になる点が一つ。創設者の1人で存命であるボビー・シールがインタビューに答えていないのが気になる。ネルソンは50人以上に今回インタビューして、使ったのは30名ほどだそうだが、まさかボビーをカットするとは思えない。そういえば、黒豹党関係のドキュメンタリーなどでは出てこない気がするのだ。いつも話をするのは、キャサリン・クリーバーだけ。けどこの前CNNの旅番組のベイエリア編には出て、最近のブラック・リブス・マター(Black Lives Matter)等の運動について語っていた。このドキュメンタリーだからこそ、彼が居ないのに違和感感じますよね。違和感と言えば、このドキュメンタリーの後にヒューイ・ニュートンの自伝本「白いアメリカよ、聞け」を読んでいたら、ボビー・シールはこういう運動に傾倒していく前は地元でコメディアン・俳優をしていたそうで、キング牧師やハンフリー・ボガードの物まねをしていたそうだ。意外。意外過ぎる!見たいけれど、やってくださいって言ったら怒るだろうね。 ヒューイ・P・ニュートンの大好きな映画が『Black Orpheus / 黒いオルフェ (1959)』。死に魅了された主人公オルフェと自分は似ている、しかし自分は何度も死を直面しても死ななかった不死鳥だと語っている。けれどそんな不死鳥も最後は黒豹党から派生したブラック・ゲリラ・ファミリーの男に麻薬関係の拗れで射殺されてしまった。なんともやるせない気持ちになるのだった。 (1448本目) |
●● トリビア 『Freedom Riders (2009)』などをはじめ、ドキュメンタリーを撮り続けるスタンリー・ネルソンの7年を費やした渾身の新作。ブラック・パンサー党について。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt4316236/http://en.wikipedia.org/wiki/The_Black_Panthers:_Vanguard_of_the_Revolution Not available from Allcinema |
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