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●● レビュー "The place of worship"(Reviewed >> 1/6/2020:TV放映にて鑑賞) |
●● 100本映画 アポロ劇場の歴史の長さとその重さを感じる『The Apollo』ニューヨーク、ハーレムの観光名所であろうアポロ劇場。オフィシャルサイトによると、アポロ劇場としてオープンしたのが1934年だそうなので、今年で86年目になる。86年もハーレムの歴史を見続けた...というよりも、ハーレムの歴史を築いてきたアポロ劇場。かつては、デューク・エリントンをはじめとするジャズ・ミュージシャンたちの活躍の場であり、キング牧師お気に入りのゴスペルシンガーであるマヘリア・ジャクソンもそこで歌い、シャーリー・テンプルと踊ったタップの第一人者ビル・”ボージャングル”・ロビンソンもステージで足を鳴らしたそのアポロ劇場は、日本の芸能人にとっても憧れの地であり、平井堅や和田アキ子といった人々がステージに立ったことがニュースになるのである。そんなアポロ劇場の歴史を、公演が行われようとしていたタナハシ・コーツ著書『世界と僕のあいだに』朗読会の準備で慌ただしい現在ともに振り返る。監督は、『Music by Prudence / 日本未公開 (2010)』にてアカデミー短編ドキュメンタリー賞を受賞したロジャー・ロス・ウィリアムス。 125番街にそびえ立つアポロ劇場。丁度その時、エラ・フィッツジェラルドの100回目の誕生日を祝う公演が行われていた。外にいたのは、ニューオリンズから来た観光客。その観光客相手にツアーガイドを務めるのが、ビリー・ミッチェル。今では偉大なジャズシンガーとして良く知られているエラ・フィッツジェラルドも、アポロ劇場のオーディションを受ける時代があったことを映像が示している。その長い86年の歴史を追う。 ただ歴史を追うのではなく、今アポロ劇場がやろうとしているタナハシ・コーツの『世界と僕のあいだに』の朗読会の準備の様子と共に語られているのが、凄く面白いと思った。タナハシ・コーツと言えば、今の黒人社会を明確に、そして克明に伝える人である。そんな彼の本と携わる人々の思いが、古い歴史あるアポロ劇場の偉大なる歴史とリンクしていくのが最高だ。「我々黒人は、PTSDに生まれるようなもんだ」という朗読会の準備をしていた人の言葉が心に刺さった。昔からある警察からの執拗な暴力事件の数々に対しての言葉だった。ハーレムで1934年と1965年に起きた大きな暴動を見つめてきたアポロ劇場は、その言葉の重さを良く知っている。だからこそ、アポロ劇場はそんな人たちを癒す憩いの場となった。そしてそんなアポロ劇場の名物と言えば、アマチュア・ナイトだ。素人参加型のショーで、テレビ放送までしており、日本の『のど自慢』や『スター誕生』などが影響されているように思える。何しろ、エラ・フィッツジェラルドがアポロ劇場のアマチュア・ナイトの勝者の一人ということが、このアマチュア・ナイトの凄さを物語っている。今でも、日本から挑戦する人々が後を絶たない。勝てば本場で認められたという証になるからだ。そんなアマチュア・ナイトには有名な客がいて、その彼女に言わせると「アマチュア・ナイトの客はブーイングする為に来ている」ということだ。そんなブーイングをされた一人が、ローリン・ヒル。彼女のその後のキャリアを知る人には信じられないことだ。そのアマチュア・ナイトを生み出したのが、俳優・監督のRalph Cooper (ラルフ・クーパー)である。そのラルフ・クーパーが制作した『Dark Manhattan / 日本未公開 (1937)』は、凄くカッコいいギャング映画です。このドキュメンタリーでも、ラルフ・クーパーは「いつもカッコ良かった」と言われていて、凄く納得した。 長い歴史を誇るアポロ劇場。そこには当然浮き沈みもあった。長い歴史があるゆえのアポロ劇場という建物が物語っている重厚感と趣とカッコ良さ。それを犇々と感じるドキュメンタリーだ。 (1737本目) |
●● トリビア アカデミー賞常連監督ロジャー・ロス・ウィリアムス監督が追うニューヨークのアポロ劇場の歴史。 トライベッカ映画祭で公開された後、HBOにて放送。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
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●● インフォサイト https://www.imdb.com/title/tt7935908/Not available from Wikipedia Not available from Allcinema |
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